わたしのグランパ/★★★
BS2でやっていたものを観た。原作は筒井康隆の同名小説、監督・脚本は東陽一、主演の「グランパ」役は菅原文太、ヒロインである孫「珠子」役は、ポッキーのCMでおなじみ石原さとみ。2003年。
中学一年生の珠子はいじめられていた同級生のマチ子を助けたために不良グループに目を付けられてしまう。時期を同じくして、殺人の罪で服役していた珠子の祖父が出所する。最初は距離を置いていた珠子だが、道端でたむろしていた不良グループを退治してくれたことをきっかけに祖父に好意を見せるようになる。が、楽しい日々もつかの間、ヤクザが周囲をうろつき始める。グランパは彼らに家を放火され殺された親友の仇をとるためにヤクザの事務所に殴り込み、そこで二人の下っ端ヤクザを殺してしまったのだ、とグランマから聞かされる珠子。ある日復讐のために誘拐された珠子を、グランパは手下を従え自動小銃を持って助けに来る。無事救出に成功したが、そのあとすぐ、川で溺れていた少女を助けるために飛び込み、引き替えに命を落としてしまう。男気を貫き通したグランパの葬儀には、クラスのいじめっ子も、退治された不良グループも、敵だったヤクザも、焼香をあげに来ていた――
物語だけを取れば、筒井らしくもないほど実験性にも超常性にも欠ける優等生的な話(といっても原作は読んでいないのでひょっとしたら原作はもっと面白いのかもしれないが)。あとはもう、主役の菅原文太と石原さとみがどれだけ演技で見せてくれるか。ホントのことを言えばポッキーのポスターの石原さとみがやたらツボに入ったので観た映画だったんだが、二人ともホントにハマり役。
文太さんが名優なのは言わずもがなだが、饒舌でありながらシャイで、無口でありながら雄弁、真面目でありながら飄々として、そして強く、正しく、ダンディ、という、あまりにもおいしいグランパのキャラを見事に演じきっていた。このキャラ、俺の歳じゃ書けないんだろうなぁ。欲しい。筒井先生、もらっちゃダメですか。
対する石原さとみも、子役と女優の中間年齢、という一番鼻につきやすい年頃でありながら、真に迫った熱演を見せていた。顔はもちろん好みなんだけど、女優としても面白い、ということが分かったという意味で、収穫だったと言っていい。途中いじめっ子を相手にいきなりドスのきいた声で啖呵を切るシーンなんか、なかなか良かった。ヤクザに監禁されて椅子にガムテープで巻かれてるところで若いヤクザに身体をまさぐられそうになるシーンなんて、この歳で女優魂を見た、って感じ。全体に、演技臭くなく自然体なままでの少女らしい感情の振れ幅が心地よく見ていられた。
ところで。主役二人の演技は良かったんだが、ストーリーとして、最後にその若いヤクザに触られそうになるところで、突然珠子の身体が椅子ごと起き上がっていくところがある。ヤクザは一人うろたえるだけで、それからカメラがひいていって、気が付くと珠子は椅子ごと宙に浮いている。理由は分からない。一番ぴったりくるのは、「珠子は実は超能力者でした」という解釈なのだが、そこ以外に珠子もそれ以外の人物も超能力など片鱗も見せてはおらず、あのシーンにはただ失笑以外出てこなかった。
ラスト、グランパが死んだ、というくだりも、「川沿いを散歩するグランパ」「助けてー、と子どもの声」「シーンが替わって公園で写生している珠子(美術部)」という展開から、「あ、死んだのかな」という予感はあったものの、そこで死なせることの突拍子もなさに、感動もしようがない、というのが正直な感想だった。
グランパのキャラの良さを印象付けて終わるためにまぁ死なせようというのはよくある手ではあるけれど、あるいは突拍子もないならばもうジョークの空気を漂わせて、珠子を救出して笑ってるグランパのアップがそのまま遺影に重なってお鈴が「ちーん」、みたいなのが常套手段として例えばある。そうすれば、「死んだ」ということを単純にそれ自体お涙ちょうだいの道具にするのではなく、「死んじゃったね」「そうだね」という乾いた空気の中で終わることが出来る。観客が自分の力でその「死」を噛み砕くだけの「間」が生まれることになるわけだ。客が涙を流すほど存分に悲しませられないのなら、中途半端な悲しみの演出(ショックを受ける珠子、悲しそうな絵、悲しそうな音楽の中の葬儀、悲しそうな参列者、一周忌の日に悲しんでいる珠子)などクサイだけだ。
21世紀の今、ものを作るということは、「クサくなる」ということを巡ってどのように自分の立ち位置を決定するか、ということである。完全にクサいことを目指し「これはクサイ」と言われることで成立する作品群もあり、クサさを極力廃したハードボイルド的な作品群もある。しかしハードボイルドを標榜すること自体に生じるクサ味を気付いていない作り手と、それをどうやって消すかに細心の注意を払う作り手では明らかにレベルが違う。
最後の最後で終わり損ねた映画。キャラが良かっただけに、もったいない。死なせなくていいと思ったんだけどなぁ。
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