2004.12.29

夕凪の街 桜の国/★★★

 平成16年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞作。30ページの読み切り「夕凪の街」と、その登場人物の子や孫の現在を描く「桜の国」全2話62ページの2本。合計104ページの薄い本。

 昭和30年、広島。「原爆スラム」とあだ名される、復興計画によって自分の家を追われた人々が住む集落。平野皆実は小さな会社に勤める年若い女性。ごく普通に職場の男性に恋をし、日常のふとしたはずみにその男性と接近したとき、彼女はふと、自分が踏み越えてきた、ピカで死んだ死体の山を思い出す。あの日、彼女は確かにどこかの誰かに「死ねばいい」と思われた。そして生きるのに必死だったあの数日間で、彼女は本当にそう思われても仕方のない人間になってしまった。先立っていった父に、姉に、妹に申し訳ないから、のうのうと恋なんてしていていいはずはないから。しかし彼女は、その思いごと、好いた男に告げた。そして翌日、彼女は会社を休む。それからもう、彼女は立ち上がることが出来なかった。男がくれたハンカチを握りしめながら、夕凪が終わって、風が吹いたのが分かった。
物語のテーマが要請する骨組みに、かっちりはまっているとは思う。必要最低限の感動は与えられていると思う。一コマ一コマに書き込まれた、綿密に取材された当時の風俗と、広島生まれの作者による生きた広島弁と、戦争の悲惨さそれ自体を直接に描こうとせず、かといって隠蔽もしない、柔らかい手つき。評価されるに値する佳作だとは思う。

 もったいないのは、ここに何かあと一つでも、読者に涙を流させる、あるいは鳥肌を立たせる、決めゴマが、決めゼリフがあれば、ということだった。本来決めゴマであるはずのコマ、決めゼリフであるはずの台詞が、ギリギリの水準で、決めきれていないのだ。手つきの柔らかさこそが作者の良さでもあるのだろうが、それでももう少しだけ、あざとく、俺を泣かせて欲しかった。惜しい。良い作品だが、四つ星には届かなかった。

 小学校や中学校の図書室で「はだしのゲン」を読まなかった人には、是非読んで欲しい。戦争の悲惨さは、地に足の着いた描き方でしか伝わらないということが、よく分かる。

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2004.07.06

新世紀エヴァンゲリオン鋼鉄のガールフレンド2nd 2巻/林ふみの/★★

 以前第一巻のレビューも書きましたが、第二巻ではようやくというかなんというか、使徒とエヴァが出てきます。でも実際、それを「いよっ、待ってました!」と歓迎するようなタイプのエヴァファンには、この本は楽しめないと思います。

 単純に言って、エヴァが出てきてから急激に失速してます。何がいけないか。これはもうひとえに「画力」としか言いようがないです。貞本エヴァにおいては、コマ割りのセンス、手間のかかった「黒い」絵、そのリアリティ、そして大人らしい控え目でいてツボを押さえた演出によって、戦闘シーンそれだけの回でも十分に通用する迫力を出していました。

 翻って林エヴァでは、エヴァが白い。それが最大の弱点になっている。それは例えばプラモデルでジオラマを作る時、子どもは全体を見ながらかっこいいポーズを決めさせるのを喜ぶのに対し、大人は細部に注目し、そしてポーズ云々よりも「汚し」のリアリズムをいかに強調するか、に命をかける。その差がそのまま、「女こどものエヴァ」である林エヴァと「漢のエヴァ」である貞本エヴァの違いになっている。

 で、残念ながら「ロボット」ってのは元来、オタクのものであり、もっと言えばおたくのものであり、漢のものなんです。

 一巻から二巻中盤までの学園ラブコメエヴァ、好きだったんですけどねぇ。まぁ冷静に見ると女性作家の想像力の限界なのか、シンジ君がまるで人間味がない、つまり「男が描けていない」部分は目に付くんですが、少女マンガだと思って読んでればそんなこと気にしないでも読めますし。

 あとついでに文句ですが、空いたページにおまけで描いてる四コマ、どれ一つとして面白くないんですが。うーん。とりあえず今後の綾波がどう悲劇に向かって突っ走っていくかに期待しておきますが、でも林ふみのの画力で、本当の大人の苦悩は描けなそうな気がするんですよねぇ。どうしても、視線が子ども。だからこそ学園ラブコメはきちんときれいに描けるんですけど。

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2004.05.31

D.Gray-man/第1夜「opening」/星野桂/★★★

 週刊少年ジャンプ新連載。星はあくまで第1話時点で。絵柄、コマ割り、台詞のセンスはしっかり合格点。キャラ作りに関してだけ、あと一歩「光る」ものが各自に欲しい。「かっこいいっぽい」台詞は吐かせているが、どうにもまだ「ただきれい」なだけ。そのキャラならではの、他のヤツには決して吐けない(と読者に思わせる)台詞が出てくればぐっと良くなるだろう。

 ところで、このマンガの当面の物語を進める推進力となるであろう「悲劇」という概念について。関連として、「戦闘美少女の精神分析」で名を売ったオタク系精神科医、斉藤環の「心理学化する社会」という近著に、トラウマに関する考察がある。一口で言えば、「近頃の物語はトラウマを扱ったもので溢れている」ということ。

 これを斉藤氏のように「世相」という横糸を設定して語ることももちろん出来るのだろうが、俺としてはこの「心理学化」が主にオタクメディアで起こっていることに注目する。というか結局、96年、97年のリーフのビジュアルノベル3部作「雫」「痕」「To Heart」辺りから、エロゲーにも「エロ」と「萌え」だけでなく「泣き」という要素が見出されるようになってきた。

 それは世相がどうとかではなく、ただ「感動」という、今まであまりエロゲーでは味わったことのないタイプの快楽を刺激されたオタクが、「泣けるゲーム」=「良いゲーム」というインプットをされたということではないか。ちょうど同時期、「エヴァンゲリオン」という現象によって、「重い物語」「過去に規定される主人公/ヒロイン」は「強いインパクトを残す」≒「面白い」という図式がまず「受け手たるオタク」の間で形成された。

 その「エヴァ」と「マルチ」に洗礼を受けたオタクたちが「送り手」の側に立った時、「オタクたる送り手」たちの引き出しには、「トラウマ」という感動の装置が象徴的に発見された。当時の風潮としても、「軽いノリでひょんなことからクラスメイトと次々Hな関係に」的な従来型の抜き重視エロゲーと対比される形で、「重い」お話=「シナリオ重視の意欲作に仕上がっているぞ」という評になり、この時点でほぼ「受け手=送り手=オタク」であった市場ではそのような価値観が形成されてしまっていた。

 ドラマツルギーの面では、乱暴な言い方をしてしまえば「感動」とは「振れ幅」である、という言い方がある。不幸な人間が幸福になる、というのがハッピーエンドの基本構造だ。その出発点の「不幸」に、主人公やヒロインそれぞれの生い立ちに関わる「トラウマ」を用意する(「痕」、「Kanon」、「月姫」など、「8年前の系譜」と呼ばれる現象である)ことで、「本人は悪くないのに特定の原因ゆえに不幸な状況に置かれている」という同情(=感情移入)されやすい状況を設定し、それを解決することでカタルシスとする。あるいは「主人公」である「プレイヤー」に、ヒロインの「トラウマ」に立ち入り、これを解消させる役を与えることで、「エロゲーの主人公」としての役割であるところの「女の子の困難を解決してあげることで心を許させ、セックスをする」という結論を担わせることができる、という方程式が成り立つ。

 このようにして、「一つのビッグヒット」というメルクマールから、オタクメディア内では「受け手である送り手」であるオタクが相互に影響を受け合い、「売りたいから作る」を前提としながらかつ「オタクたる自分が見たいものを作る」という特有の立ち位置によって、作劇のメソッドを「泣きというジャンル」として確立させていく。そもそも「萌え要素」というものの中に「巫女さん」「メイドさん」が並んでいるように、「オタク受けする物語要素」の文脈の中に「泣き」もまたあるのだ。だから「メイド」なんて文化が無かった日本にメイドものが流行っているこの現状と、心理学化するオタクメディアは、割ときれいな相似形なのではないか、なんて単純に思えたりもするのである。

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2004.05.08

コミックマスターJ/第11巻/田畑由秋・余湖裕輝/★★★

 週刊少年チャンピオンでアクメツ連載中の田畑&余湖コンビの新刊。マイナー漫画なので概要から解説しますが、「コミックマスターJ」は月刊誌ヤングキングアワーズで連載中の漫画。コミックマスターJはスーパーアシスタント。あらゆるペンタッチを可能とし、必要とあらば作者の代わりに今週のストーリーから作ってしまう。しかも週刊20ページあげるのに3時間とかからない。ただし依頼料は一回500万。そして本当に面白い、魂を感じる漫画の手伝いしかしない。そんなJを中心に、漫画家、そして漫画界の悲喜こもごもを描く作品です。

 で、基本的には「何らかの理由で漫画が〆切までに描き上がらない」漫画家がいて、そのピンチに至るまでのドラマと、Jを呼ぶまで、そしてJがその漫画に魂を見るかどうか、魂がないとしたら、そこでJは漫画家にどんな一言を放つのか。そんなことが主軸となって語られる1話〜2話完結のお話。

 なんだけど、さすが11巻にもなるとただピンチの漫画家のアシをするだけでは物語が作れなくなってきてて、今回のテーマは「ブックオフ」「本屋の万引き」「声優と漫画家」「ネットゲームで原稿を遅らせる漫画家」と、どんどん邪道な感じの方向へ。まぁそれぞれに「新古書店が漫画家の権利を侵害している!」「しかし大衆がそれを支持する以上ブックオフは潰れない!」(さすがに作中ではブックオフではなく「ブックスガイ」になってます)とか、万引きで潰れた個人書店の店長が亡霊となって全国の漫画万引き少年に天誅を下して回る(アクメツ?)とか、結局漫画の中で都合のいい解決など提示できずに、我々に問題を突きつける形で終わるため、なかなか考えるところはある。(そういえば「バキ」の板垣恵介がチャンピオンの巻末コメントで「「バキ」を万引きして報道されてたキミ。編集部へTELくれ。話したい。」と書いていたことがありましたが、電話きたらどんな話をするつもりだったんでしょう。やっぱ直接会って鉄拳かな。)

 まぁ声優ネタは今の新人声優余りの状況を漫画家を交えて面白おかしく描いただけだし、ネットゲーについては「Jがネットゲー最強の戦士になっていて漫画家たちを倒して漫画を描かせる」というグダグダな話になってしまってますが。

 と、ここまで書いて何が言いたいのかというと、「クリエイターの魂、良い漫画を描きたいという情熱と、落とすわけにはいかないという作り手の意地が、本物の漫画を知り、誰よりも漫画を愛するJとぶつかった時、どんな熱い台詞が飛び出すのか」という、JをJたらしめている面白さのキモが、この巻にはほとんど見られない、ということ。もっと短く一言で言えば、「長く続けすぎて当初のテンションが落ちてきてる」ってこと。

 具体的に第何巻が、とかまで覚えてませんが、過去のJは余裕で四つ星付けられるくらい泣かせる話がいっぱいあったんですけどね。もうそろそろJの野望という本筋に話を収束させていかないと、尻すぼみで不完全燃焼のまま終わってしまいそう。潮時なのかなぁ。

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2004.05.04

新世紀エヴァンゲリオン エヴァ&エヴァ2アンソロジー/★★

 少年エース編集部が公式に編集したエヴァアンソロ本。エースその他で活躍中のプロの漫画家やイラストレーターが多数参加。これも購入動機は「角川が出したエヴァだしなぁ」というなし崩し的な理由。

 でも実際、こういう言ってみれば「同人誌」な代物は、メーカーとかレーベルで買うもんじゃなく、描いてる作家の好き嫌いで、あるいは表紙で買うものだった、と久々に思い出した。というわけで、表紙の絵はこれ。この時点で買い控えておくべきだったかもしれない。だってこんな野性的なウルフカットは綾波じゃないです。こんな敵意むき出しの男らしい表情も綾波じゃないです。綾波はもっとどこかで脆さがないと。

 内容で良かったのは、表紙めくってすぐの吉崎観音(ケロロ軍曹)と小畑健(ヒカルの碁デスノート)のカラーピンナップくらい。残りの漫画は正直ギャグのキレも悪くて、格好良く描こうとしたものも今一つノリ切れず。あ、沙村広明(無限の住人)が得意の鉛筆画で描いたリツコさんの一枚絵は格好良かった。

 あと特筆は滝本竜彦(NHKにようこそ!)のエヴァエッセイ。以前少年エース誌上に載ったものらしいんだけど、簡単に要約すると、綾波にお熱だった僕の痛い青春時代って感じ。お得意の自虐味に溢れたエッセイは、「こんな時代もあったなぁ」とせつなくなってしまいました。まぁ総括すると、肝心の漫画はどれもこれもイマイチだった、ということで。

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新世紀エヴァンゲリオン鋼鉄のガールフレンド2nd 1巻/林ふみの/★★★

 もう少し悪ノリの過ぎた感じなのかと思ってたら、意外と少女漫画としてまとまっていて驚いた。シンジは優柔不断で押しの弱い性格はそのままだけど、父親との自らの存在を賭けるほどの対立がないぶん、素直でかわいい感じ。アスカも性格はそのままながら、母親の自殺とか早く自立しなければならないという強迫観念みたいなものが消えて「素直になれない恋心」みたいなものが表面に出てるからそのぶん好感が持てる。綾波だけはアニメとはガラリと変わって、というよりアニメ最終回でパンをくわえて曲がり角でシンジとぶつかった、あの明るく楽しくちょっと生意気な綾波。

 キャラ設定だけで言えば、エヴァをエヴァらしくしていた全てがこそげ落ちて、それこそオタク女が妄想で描いた同人誌みたいな状況になっている。ではなぜこの作品が三ツ星かといえば、この物語が変に原作に縛られずに、このキャラクターたちを使った新しい物語として一から破綻なく構成し直されているから。いつもハキハキ愛想良くしているけれど、いつも影に淋しさを抱えている綾波の、たまにシンジにだけぽろっと見せる淋しげな笑顔とか、それに対して「男子に媚びを売ってる」と評価するアスカの苛立ちが、実はシンジに無遠慮に近付いていく行為の方によってこそ生じていることに気付き始める過程とか、丁寧に少女漫画として作り直されている。

 それでいて、「わたし、一人だから」と微笑む綾波の出生の秘密とか、光の巨人の夢を見るシンジだとか、その話を聞いて「アダム……」と呟く謎だらけのカヲルくんだとか、エヴァらしい謎の配置もきちんとされている。キャラクター同士の恋模様としても、エヴァに絡む大きなストーリーとしても、素直に「続きが読みたい」と思わせてくれる。「エヴァだししょうがないから付き合うか」と思って買ったけど、今後に期待してもいいのかも。

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2004.04.19

新世紀エヴァンゲリオン第9巻/★★★

 カヲル君、君が何を言ってるのかたまに分からないよ!(元ネタ)って感じで、アニメ版とのカヲルの性格の違いにびっくり。でも、この違いの理由こそ貞本エヴァが描きたいことの核心なのだろう。10巻以降に注目。040419003040.jpg

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2004.03.28

デビルマン/★★★

 デビルマンを少しでも知っているなら、あるいはデビルマンをアニメでしか知らないなら、是非読んでおくべき。「デッビール!」のイメージが完全に覆されました。講談社漫画文庫で全5巻。

 主人公不動明は久々に再会した親友飛鳥了に呼ばれ、デーモンの復活が迫っていること、悪魔と合体し、デビルマンとしてそれに立ち向かうしかないことを伝えられる。儀式を終えデビルマンとなった明が悪魔を引き裂いていく姿にしかし、了は恐ろしいモノを生み出してしまったと部屋の隅で震えていた……

 ってここまでの序盤200ページくらいは、古き良き昭和の漫画って感じで正直退屈だったんですが、有名なライバル・妖鳥シレーヌ(半裸)が登場し、デビルマンとしての戦いが描かれ始めてからは徐々に物語はヒートアップ。テレポートにより世界の要人と次々合体し、世界を混乱させていくデーモンたち。次々に変わっていく状況に、それでもがむしゃらに立ち向かうデビルマン。それを後ろから見ているクールでミステリアスな親友飛鳥了。

 やがてデーモンの無差別な合体能力を恐れた人間たちは、隣人が悪魔ではないかと疑心暗鬼に陥り……その先に何が待っているのかは書きませんが、とにかく次第に悲壮さを増して盛り上がっていくストーリーにぐいぐい引っ張られていきました。そこに横たわる、悲しさ、そして美しさ。永井豪、正直見くびってました。

 このくらい「大変なことになる」物語、俺も書きたいなぁ。実力も伴わないのに大風呂敷を広げすぎると悲惨な結果になる、というのは痛いほど知ってるから、なかなか踏み出せないでいたり。

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2004.02.28

マリア様がみてる長沢智/★★★★

 最初の十数ページ(つまり第一話分くらい?)はさすがにひびき玲音絵との違いにだいぶつまづいて入りづらかった。祥子さまは祥子さまに見えないし、蔦子さんは縁なしじゃなく縁ありメガネかけてるし、令ちゃんとロサギガンティアの区別がイマイチつきづらいし。

 でもその代わり、長沢絵では祐巳が玲音絵よりアニメ絵よりさらに小説に忠実に、タヌキ顔でクセっ毛で、何より読者の共感対象として描かれている。さすがマーガレット、少女マンガの文法を綺麗に踏まえられている。百面相も「雰囲気を壊さない」という暗黙の不文律に囚われるアニメ版よりも一層小説のイメージに近く、あるいはイメージを補完する形で書けている。

 そのことと地続きのこととして、何よりも感情の描き方の丁寧さにホッとした。アニメにしてもCDドラマにしても、基本的に主人公一人の感情を一人称で描写することに特化して進化したメディアじゃない。でも少女マンガだけは明らかにその文脈。各メディアで散々言われてきた「祐巳の「脳内ツッコミ」が足りない!」という声は、このマーガレット版にだけは完全に当てはまらない。そしてそれこそ、マリみての翻訳に対して一番大切なファクターではなかったか。

 アニメ版の初期がやたら原作ファンからけなされてたのも、一話に話を詰め込みすぎてどこでいつ感動していいか分からないから。その分小説なら読者レベルでも一旦立ち止まって感動することも出来るし、作者レベルでも大事なシーンだけ文字数を費やして時間の流れを作為的にゆるめることが出来る。

 結局のところ、そのドラマがいいか悪いかは、作り手がどれだけ物語の「見せ場」を理解し、見せ場を見せ場にするためにそれ以外に伏線を張り、見せ場をじっくりと意味付けて、濃く、時間をかけて見せられるか、にかかっているのだろう。もちろんその見せ場自体の意味のインパクトを生み出すという作業はまた別の話ではあるけれども。

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2004.02.27

ロボこみ/第16 話「ブラックキャット」/★★★

 マンガ史に残る傑作では決してないと思うんだけど、最近何故かロボこみが面白くてたまらない。全てのギャグが予測範囲内と言ってしまえばそれまでなんだが、その丁寧さはある意味で既にして古典。
 ギャグとコメディに差があるとして、その差が「破壊力」と「起承転結」の違いだとするなら、ロボこみはその両者が絶妙のバランスで成り立っている。コマ割りも普通で絵柄にも新味はないが、ネタと同じく丁寧に、女の子もかわいく描けている。
 最後に感じるのが悪意のなさ。丁寧さ、一生懸命さ、あるいはへりくだり方、と言い換えてもいいかもしれない。余裕のなさ、とは似て非なるもの。つんくの対極にあるもの。俺自身の創作の目指す場所。この問題については、長く考えていくことになりそうだ。

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2004.02.24

HUNTERxHUNTER/「弱点」/★★★★

 キルア、ビスケに諭される。「あんたは慎重すぎる。例え互角の相手でも、そのMAXを計ってしまう。少しでも格上なら逃げ切ることしか考えられない。このままじゃあんたはいつか、ゴンを見殺しにする。」
 久々に激しく良かった。前にもイルミに似たようなことを言われていたのに、それに対する「意味付け」をビスケから与えられただけで、読者に緊張感を蘇らせ、続く戦いに対する「見方」を教える。それは「成長するための試練」であるという意味付け。もちろんこうなったら成長はするに決まってるんだけど、言うと言わないで緊張感が全く違ってくる。しかも指摘されたのは、それまでゴンに対するキルアの長所であり、それによって生き延びて来られた、ゴンから直接感謝もされた点。それだけにそこを明確な欠点と指摘されると足下をすくわれた感じでショックは大きい。上手いよなぁホント。

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2004.02.22

週刊少年チャンピオンNo.12/★★★

 今週言いたいことは二つだけ。サムライジと曲芸家族、最近勢いのある新連載二つで同時に尺八ネタがかぶったのはチャンピオンという「少年誌」としてどうだろう。あと祝・円の乳首解禁。この調子でサムライジも乳首ケチるな。どうせチャンピオンなんだから。

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2004.02.17

DEATH NOTE/page.10「合流」/★★

いや、面白いんだよ。毎週楽しみに読んではいる。いるんだけど、なんだかこれに対して何かを言う気にならないというか。よく練られてるんだろうけど、どうしても頭で練ってる感が否めないんだよな。それに、例えば冨樫義博なら「HUNTERxHUNTER」を書いていても、それは「HUNTERxHUNTER」である前に「冨樫漫画」なんだけど、こっちはよく練られた「DEATH NOTE」では有り得ても、大場つぐみ漫画とは言い難い。だって俺がジョジョの設定をもらってもあの「JOJO」は絶対に書けないけど、「DEATH NOTE」なら書けそうな気がするもん。結末は知りたいとは思えても、単行本は恐らく買わないだろう、と思う理由の一端は、たぶんそこだ。

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武装錬金/第30話「接戦」/★★

秋水vsカズキ・・桜花vs斗貴子。戦いの模様が大味なのは、るろ剣に比べて武器にギミックが増えて自立的になった分、細かい戦略や心理戦を描きにくくなったからか。そもそもこいつら、お互い戦う理由が乏しいのが盛り上がりに欠ける原因。どうも「ただ戦ってる」だけで信念のぶつかり合いが無いと感情移入は出来ない。戦いそれ自体で面白がれる程には新味も戦略性もないし。理由が明かされる来週に期待か。

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2004.02.14

かりんと。/★

憧れの同級生と冴えない主人公、ライバルのモテキャラとしてヒロインの兄。ある日変身して外見が変わってキャーキャー言われるようになるが……。特に新基軸の見当たらない凡百の萌え漫画。絵柄も今一つ洗練しきれていない泥臭さが残る。センス自体古く、エイケン的な大化けも期待薄。

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